オンライン学会の費用 | 事例やコスト削減方法も解説
2024年現在、オンラインでの学術大会も一般的になりました。しかし、「オンライン学会の開催費用は?」という疑問がある方も少なくありません。今回は、オンライン学会に関わる費用項目、現地開催とのコスト比較を解説いたします。
オンライン学会の基本と費用構成
オンライン学会の基本
オンライン学会とは、WEB会議ツールを利用しオンライン上で学会を開催することです。
「感染リスクの削減」「参加のしやすさ」といったメリットがあり、2020年以降多くの学会がオンラインで学会を開催しています。
オンライン学会のメリットや開催までの流れについては、こちらの記事もご覧ください。
【2023年版】オンライン学会の開催方法やメリットまとめ | SOUBUN.COM
オンライン学会の費用の概要
オンライン学会の費用には、主に以下の項目があります。
・Web会議ツールの利用料金
・受付システム/参加システムの利用料金
・配信機材のレンタル※
・ライブ配信の会場レンタル※
・学会サポート業者への委託 / 代行
・アルバイトスタッフへの人件費
・アーカイブ作成と配信
・大会参加者へのフォローアップ
※運営スタッフや発表者がオンサイトで集まる場合に必要となります。
オンライン学会に必要なツールとその費用
学会をオンラインで開催する場合、Web会議ツールや参加登録システム、決済システムが必要になります。以下では、各種ツールの解説とその費用をお伝えします。
Web会議ツールの費用
Web会議ツールとは、ZoomやWebexをはじめとするオンライン上でのコミュニケーションツールです。利用料金はアカウント数や参加人数によって変動します。また、参加者の多いイベントの場合、ZoomやWebexの無料プランでは対応できません。そのため、有料契約を結ぶ必要があります。
双方向でのリアルに近い会話を可能にする会議形式か、一方通行のオンラインセミナー形式かで使用するツールは異なります。
Zoomの場合、双方向型ならZoomミーティングを採用します。双方向の密なコミュニケーションが可能であり、ポスター発表や小規模な研究発表に向いています。
一方通行型であればZoomウェビナーを使用します。少人数が大勢に向けて発表する形式に適しており、研究発表や基調講演に向いています。また、参加者はアンケートやチャット、Q&Aの機能を使ってコミュニケーションをとることも可能です。
参加人数に応じて使用するツールも異なります。Zoomミーティングの参加人数の上限が300人、Zoomウェビナーの参加人数の上限は10,000人です。
参考に、Zoomミーティング・Zoomウェビナーの料金を提示いたします。
・Zoomミーティング料金(2023年5月時点)
プロプラン | ビジネスプラン | ビジネスプラスプラン | |
参加人数上限 | 100人 | 300人 | 300人 |
月額利用料金 | 2,115円 | 2,700円 | 3,125円 |
年間利用料金 | 20,100円 | 26,900円 | 31,250円 |
・Zoomウェビナー料金(2023年5月時点)
参加人数 | 月額利用料金 | 年間利用料金 |
~500人 | 10,700 | 92,800 |
501〜1,000人 | 45,700 | 457,000 |
1,001〜3,000人 | 133,100 | 1,330,600 |
3,001〜5,000人 | 334,700 | Zoomに問い合わせ |
5,001〜10,000人 | 872,300 | Zoomに問い合わせ |
参考:Zoom公式サイト( Zoomミーティング料金 , Zoomウェビナー料金 )
※サポート業者に契約やZoomの設定を依頼する場合、別途料金が必要になります
参加システム / 受付システムの利用料金
学会の参加登録システムとは、学会の申込や参加者の管理、参加費の徴収をオンライン上で完結させるシステムです。
基本的な機能として、参加申し込みや入金の自動対応・管理があります。加えて、会員への連絡やリマインド、英語対応、領収書の発行なども可能です。
参加登録システムの料金はシンプルなものであれば数万円、機能数の多いものなら100万円以上かかります。学会の目的に合わせて必要な機能を選定し、予算内で利用可能なツールを選択することが大切です。
大会の参加登録システム選びや運用にお悩みの方は、こちらのサービスもおすすめです。学会サポートの経験に基づく、複数システムの比較と提案、導入後の運用サポートを提供いたします。
オンライン学会の運営に関わる費用
学会サポート業者への委託 / 代行
ライブ配信中のトラブルを未然に防ぐため、専門の学会サポート業者に業務を委託するケースもあります。業者へ委託により、以下のようなサポートを受けられます。
・サポートスタッフの派遣
専門的な知識と経験を持つスタッフを派遣します。主催者側は学会の内容に専念することができ、参加者にとってもストレスのない環境が提供されます。
・大会ホームページの制作
インターネット上で公開する大会ホームページの制作も依頼することができます。また、受付システムと紐づけることで、ホームページ上でログイン・参加登録・決済を行うことも可能です。
・マニュアル制作
オンライン大会に関わるさまざまな業務の手順や、画面や音声の共有ができないなどのトラブル対応方法をまとめたマニュアルを作成します。運営者やボランティアスタッフが何か問題に直面したとき、迅速かつ適切に対応することが可能となります。
・事前レクチャーやリハーサルの実施
大会の準備に必要なオンラインツールを利用する上でのレクチャー、リハーサルなどを実施します。これにより、学会は大会当日に技術的なトラブルが発生するリスクを低減できます。
学会サポート業者への委託は、オンライン学会の運営をスムーズに進める上で重要な項目です。しかし、その分費用も発生しますので、予算内で最適なサービスを選ばなければなりません。
SOUBUN.COMでは学術大会のサポート事業を行っております。オンライン学会についても多くのサポート実績がございます。
サービスの詳細については、以下の記事をご覧ください。
配信機材・会場のレンタル
運営スタッフや発表者がオンサイトで集まる場合、配信機材や会場が必要になります。配信機材の内訳は以下の通りです。
・配信用PC
・配信用カメラ
・ビデオキャプチャー
・マイク
・音響ミキサー
上記の機材はあくまで一例であり、学会の配信方法によって必要な機材は異なります。例えば、PCの内蔵カメラを利用するのであれば配信用カメラは必要ありません。
会場については、人数に応じて会議室やレンタルスペースを活用すると良いでしょう。また、学会会員が所属する大学の教室を借りる方法もあります。
スタッフの人件費
サポート業者や学生アルバイトなどを含むスタッフの人件費が必要となるかもしれません。これには、学会の進行管理、技術サポート、参加者対応など、幅広い業務が含まれます。
・ 学会の進行管理の人件費
オンライン学会の進行をスムーズにするためには、各セッションのスケジュール管理、質問対応、トラブルシューティングなどの業務が必要です。専門的な知識と経験が求められるため、学会内で担当者を作るか、外部の業者に委託することになります。
・技術サポートの人件費
オンライン学会では、インターネット接続やライブ配信の設定、参加者からの技術的な問い合わせ対応など、技術的なサポートが必要となります。経験豊富なスタッフが求められるため、外部の業者に委託することが一般的です。
・参加者対応の人件費
参加者からの問い合わせ対応や、登録確認、資料配布なども重要な業務です。これらの業務は時間と人手を必要としますが、学生アルバイトを活用することで、コストを抑えることも可能です。
スタッフの人件費は、学会の規模や目的によって変動します。そのため、予算配分やスタッフの選定には十分な計画と配慮が必要です。
オンライン学会の終了後の費用
学会が終了した後も、関連する業務とその費用が発生します。具体的には、アーカイブの作成や配信、参加者へのフォローアップが挙げられます。
・アーカイブ配信とその費用
講演や発表内容を録画し、後からオンデマンド配信をする学会も増えています。その際には、録画データの編集や保存、配信プラットフォームとの契約が必要となります。
一例として、オンデマンド動画配信に利用されることの多い「Vimeo」の利用料金を掲載いたします。
・Vimeo料金事例(2023年5月時点)
Starter | Standard | Advanced | |
動画の上限数(年間) | 60本 | 120本 | 500本 |
月額利用料金 | 1,200円 | 2,900円 | 5,500円 |
年間利用料金 | 14,400円 | 33,100円 | 66,000円 |
※2023年5月時点、Vimeoは年間契約のみを提供しています。月額利用料金は、あくまで月々に支払う金額とご認識ください。
・参加者へのフォローアップとその費用
大会終了後、参加証明書の発行、アンケートの配布と集計、アーカイブの案内などの業務もあります。メールやシステムで行うことはもちろん可能ですが、外部の業者やアルバイトに依頼する場合には人件費が発生します。
オンライン学会と現地学会のコスト比較
学会の現地開催とオンライン開催の費用を比較するとオンライン学会の方が負担が小さいことがほとんどです。
現地開催に必要な会場費や人件費、設備費や印刷費が不要になるのが大きな要因です。ただし、ツールやシステムの利用料金は現地開催よりも高額になる傾向があります。
コストの比較表
オンライン開催と現地開催で費用に大きな違いがある項目を表にしてまとめました。費用の比較としてご覧ください
オンライン開催 | 現地開催 | |
会場費用 | 不要 | 必要 |
講演者の交通費・宿泊費 | 不要 | 必要 |
WEB会議ツール利用料 | 必要 | 不要 |
人件費 | 必要(小) | 必要(大) |
設備・機材 | 基本不要 | 必要 |
印刷費用 | 不要 | 必要 |
参加登録・ 決済システム利用料金 |
必要 決済をオンラインで 完結させるため |
選択可能
内製化も可能 |
オンライン学会のコストを抑える方法
オンライン会場数の削減
オンライン開催の場合、会場数がZoom等の利用料金に直結します。たとえば、学術大会で10会場を用意する場合、10アカウントでZoomの有料契約を結ぶ必要があります。
そのため、会場数の削減が予算削減に繋がります。セミナーや研究発表のタイムテーブルを調整することで、1〜2会場を減らすことができるかもしれません。それにより、Zoomミーティングであれば2000円〜5000円、Zoomウェビナーであれば10万円以上コストを抑えられるかもしれません。
予算に余裕のない状況でのオンライン開催であれば、まずオンライン会場数を見直すことをおすすめいたします。
Zoomミーティングを利用する
学術大会では、Zoomウェビナーが利用されるケースが多くあります。ウェビナーは一方通行型コミュニケーションに特化しており、参加者側のカメラ・マイクがオンにならずトラブルのリスクを削減できる点も好まれています。
一方、Zoomウェビナーはミーティングと比較して料金が高く設定されています。そのため、参加者が300人以下であれば、ウェビナーではなくミーティングを選択することで1アカウントあたり8,000円の費用を削減することが可能です。
Zoomミーティング ビジネスプラン |
Zoomウェビナー (参加者上限500名) |
|
月額利用料金 | 2,700円 | 10,700円 |
年間利用料金 | 26,900円 | 92,800円 |
例えば、参加者が300人を超える企画ではウェビナー、300人未満ならミーティングとツールを使い分けることで、料金を抑えることもできます。
ただし、ミーティングとウェビナーでは参加者が見る映像やオンライン会場への入室方法が微妙に異なることから、参加者が混乱しやすくなるケースもあります。両方のツールを併用する場合には、参加者に混乱が生じないよう先に周知する必要があるでしょう。
オンライン学会の費用シミュレーション
ここではオンライン学会にどの程度費用がかかるか、予測シミュレーションした結果を掲示いたします。オンライン大会を検討する際の参考になれば幸いです。
小規模学会の場合(参加者200名)
大会概要:研究発表や講演を実施
参加者数:200人
オンライン会場数:3会場
開催日数:2日間
外部委託:当日サポート・リハーサルの実施を依頼
学会の希望:参加人数が少なく予算に余裕もないので、受付システムや大会HPにかける費用は最小限にしたい。
上記の想定で学術大会を開催する場合、費用の総額は約50万円です。
大項目 | 小項目 | 単価 | 数量 | 金額 |
HP制作費 | HP制作 | ¥ 200,000 | 1式 | ¥200,000 |
参加登録・決済システム |
決済手数料 | ¥59,000 | 1式 | ¥59,000 |
Zoom関連費用(1ヶ月) | Zoomミーティング ビジネス |
¥2,700 | 3アカウント | ¥8,100 |
クラウド容量追加オプション | ¥13,400 | 1ヶ月 | ¥13,400 | |
人件費 | 当日サポートスタッフ(2日間) | ¥50,000 | 2人 | ¥100,000 |
リハーサル | ¥20,000 | 1回 | ¥20,000 | |
機材レンタル (1週間) |
ホスト用PC | ¥25,000 | 2台 | ¥50,000 |
合計(税別) | ¥450,500 | |||
合計(税込) | ¥495,550 |
大規模学会の場合(参加者1000名)
大会概要:研究発表や講演を実施、大会の映像をオンデマンドで配信する。
参加者数:1000人
オンライン会場数:7会場
開催日数:2日間
学会の希望:参加人数が多いため、参加登録システムを導入。また、オンデマンド配信も実施する。
上記の想定で学術大会を開催する場合、費用の総額は約200万円です。
大項目 | 小項目 | 単価 | 数量 | 金額 |
HP制作費用 参加登録システム利用料 |
HP制作基本料金 各種機能の追加 |
¥1,250,000 | 1式 | ¥1,250,000 |
Zoom関連費用(1ヶ月) | Zoomウェビナー500人プラン | ¥10,700 | 6アカウント | ¥64,200 |
Zoomウェビナー1000人プラン | ¥45,700 | 1アカウント | ¥45,700 | |
録画用追加クラウド(200GB) | ¥5,400 | 1アカウント | ¥5,400 | |
学会サポート業者への委託 | 発表者・座長用参加者マニュアル制作(日英対応) | ¥80,000 | 1アカウント | ¥80,000 |
リハーサル | ¥30,000 | 1回 | ¥30,000 | |
人件費 | 当日サポートスタッフ(2日) | ¥50,000 | 7人 | ¥350,000 |
機材レンタル | ノートPC | ¥20,000 | 7台 | ¥140,000 |
オンデマンド配信利用関連 | 動画プラットフォーム利用料金 | ¥24,000 | 1契約 | ¥24,000 |
動画保管用オンラインストレージ 契約料金(1ヶ月) | ¥10,000 | 3ヶ月 | ¥30,000 | |
合計(税抜) | ¥2,019,300 | |||
合計(税込) | ¥2,221,230 |
※シミュレーションはあくまでも1例です。実際の学会では、展示企画、ポスター発表、受付業務、託児所、旅費・交通費など、項目以外の費用が発生する可能性がございます。
オンライン学会の相談はSOUBUN.COMまで!
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