クラウドファンディングで研究費を獲得する方法
研究費の捻出は研究者の課題の一つです。その中で、新たな資金の獲得方法としてクラウドファンディングが注目されています。そこで本記事では、クラウドファンディングで研究費を獲得する方法を解説いたします。
研究費を獲得する方法
科研費
国から支給される研究費として、一般に「科研費」がよく知られています。正式名称は「科学研究費助成事業」であり、あらゆる分野の学術研究の発展を目的に、査読(ピアレビュー)による審査を経て助成金が支給されます。
科研費は内閣府の「競争的研究費制度」に分類されるものであり、その競争率は非常に高く、2022年度は応募数649件に対し採択されたのは80件(採択率12.3%)です。
日本学術振興会HPより
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/2022/g_0427_3/index.html
また、過去の研究実績も重要です。それ故、経験豊富な教授や准教授ならともかく若手の研究者にとっては採択されるハードルは高いものになります。
クラウドファンディング
科研費以外での研究費獲得方法として、近年は学術分野でのクラウドファンディングが活発化しています。
クラウドファンディングとは、一般から寄付や購入という形でプロジェクトを支援してもらう仕組みです。多くの場合は目標金額を集めることに成功した場合のみ資金を獲得できます。学術分野においてはプラットフォームと大学が連携し支援者を募る例もあり、世界から注目を受けています。
メリットとして、実績がなくとも熱意やPR次第で高額な研究費も獲得できることです。実際に、100万円以上の研究費を獲得する例も多く見られます。
ただし、学術型のクラウドファンディングでは「研究の社会での活用」を中心に、基礎研究よりも応用的な研究・技術の方が多くみられます。これはクラウドファンディングが支援者への「リターン」を必要とし、商品化や書籍化、医学分野であれば治療法の発見など明確なリターンを提示できるプロジェクトの方が人気が高くなるためです。
とはいえ基礎研究でも挑戦の熱意やPRの工夫によって100万円以上の研究費を獲得している例もあり、研究の魅力や熱意をうまくアピールすれば基礎研究でも目標金額を達成することが可能です。
その他助成金
他にも、民間団体や企業、大学による助成金も研究費として広く利用されています。
一般財団法人や一般社団法人などは「環境資源」や「細胞研究」など、ある程度研究の分野を限定し研究課題を募集する傾向にあります。自身の研究テーマを助成している団体がないか、まずは調べてみましょう。
民間団体による助成金を探す際は、(株)キーエンスが運営するe-Grantがおすすめです。研究分野ごとに登録された研究予算助成の案件を一覧で表示し、申請の要件も要約して掲載されています。
e-Grant:https://www.e-grant.jp/
研究費をクラウドファンディングで獲得する方法
プロジェクトの概要を決定する
新規のプロジェクトを申請する前に、以下の事項を明確にします。
・プロジェクトの目的
・プロジェクトを立てた理由
・プロジェクトの目標金額
・支援の種類
・支援に対するリターン
クラウドファンディングの支援方法は大きく「購入型」と「寄付型」に分けられます。
購入型の場合、支援金額に応じた品物やサービス、権利などを支援者へリターンします。
寄付型の場合、支援者へのリターンはお礼の手紙やメール、謝辞に名前を掲載するなどになります。基本的に品物やサービスでのリターンはありません。
研究関係のプロジェクトの場合は、寄付型を選択する傾向にあります。目的や目標金額に応じて最適な支援方法を選択しましょう。
リターンについて、研究関連のプロジェクトの場合は研究報告書や論文の謝辞欄にお名前を掲載する、サイエンスカフェへの招待などがよく見られます。
募集するクラウドファンディングサイトを決める
日本国内ではREADYFORやCAMPFIRE、academistなどのサイトがあり、その中から自身の目的に応じて掲載先を選択する必要があります。
判断軸としては、以下のものが考えられます。利用規約や口コミなどを参考に比較しましょう。
・手数料
・成功率
・ユーザー数
・科学、学術系プロジェクトの先行事例数
・サポート内容
中でも手数料や成功率、ユーザー数は大切な指標であると言えます。費用対効果のおおよその目安となり、ユーザー数が多ければそれだけ自身の研究を発信する機会となります。
とは言え、ユーザー数だけではなく、利用ユーザーの傾向にも目を向けなければなりません。サイトが公開している情報はもちろん、他の活動に向けられたコメントなどからも情報を集めることが大切です。
また、サポート内容も大切な指標です。研究者の本業はあくまで研究であり、研究費獲得に割く時間は少しでも減らしたいところです。。また、SNS等を利用した宣伝戦略についても独学で勉強するのも労力と時間が必要になります。。面談や審査を通じてのサポートを利用することで、初めてクラウドファンディングを利用する研究者でも安心してプロジェクトを進められます。
【参考】academist(アカデミスト)とは?
参考に、日本の企業が運営するクラウドファンディングのサイト『academist(アカデミスト)』を紹介いたします。academistは日本で初めての学術専門クラウドファンディングサイトです。2014年よりサービスを開始、現在までに200を超えるプロジェクトを実施しており、その成功率は85%と非常に高いことが特徴です。
academist HPより https://academist-cf.com/researchers/forresearchers?lang=ja
注目すべきはプロジェクト成功のためのコンサルティングです。学術型クラウドファンディングのノウハウを持つ専門のサポーターも付くため、初心者でも安心してプロジェクトを進められます。
また、支援者も科学や学術に関心のある人が多いことも、成功率を高める要因の一つです。
academistは所属や経歴を問わず、大学や大学院の学生も含む全ての研究者の挑戦を歓迎しています。クラウドファンディングに挑戦する方は、利用を検討してみてください。
クラウドファンディングのページを作成する
クラウドファンディングにおいては、プロジェクトの魅力や挑戦への熱意、目指している理想状態をわかりやすく伝えることが大切です。
研究内容を一般の方に伝える際には、専門用語の使用を避ける、スライドや動画でわかりやすく伝えるなどの工夫をしましょう。プロジェクトタイトルのキャッチコピーもわかりやすく、目を引くものにすることが大切です。
また、熱意を伝える上で意識すべきは「共感」です。支援者に「応援したい!」と思わせるには、貴方の思いや理念に共感してもらう必要があるためです。自分の原体験やこれまでの実績を丁寧に書き、支援者が応援したくなる文章を完成させましょう。
支援金を研究費に充てプロジェクトを実行
サイトへの投稿が完了し研究費を獲得したら、それを資金に実際にプロジェクトを開始します。支援者への感謝のメールなどはもちろん、プロジェクトの活動状況もきちんと報告・公開しましょう。こまめな発信を続けることで、自身の研究を応援する「ファン」になってくれるかもしれません。
もし目標金額を達成を実現できなかったとしても、支援してくれた方には必ず感謝を伝えましょう。目標金額の達成未達成に関わらず、応援してくれた支援者には誠実に対応することを忘れないことが大切です。
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