ハイブリッド学会の費用 | 開催に必要なシステムも解説
「ハイブリッド学会」とは、オンライン視聴と現地会場での参加を組み合わせた開催形式です。最近ではハイブリッド形式を採用する学会も増加している一方、開催費用についての疑問もお聞きします。今回はハイブリッド学会にかかる費用を解説いたします。
学会のハイブリッド開催の方法と費用
ハイブリッド学会の開催方法
ハイブリッド学会とは、現地会場の映像をZoom等を通じてWEB上でも配信する開催形式です。対面で行う通常の学会に、WEB配信用のカメラやパソコンを用いることで開催できます。
ハイブリッド学会については、こちらの記事もご覧ください。
ハイブリッド学会の費用項目
オンライン開催と会場開催の両方を組み合わせるため、費用は複雑になります。一般に、ハイブリッド学会の費用には以下の項目があります。
・会場費
・受付システム/参加システムの利用料金
・Web会議ツールの利用料金
・配信機材のレンタル
・学会サポート業者への委託 / 代行
・アルバイトスタッフへの人件費
・アーカイブ作成とオンデマンド配信
・抄録集印刷費
ハイブリッド学会に必要なシステム・ツールの費用
受付システム / 参加システム
学術大会の受付システム・参加登録システムは、学会の申込や参加者の管理、参加費の徴収をオンライン上で行うシステムです。参加申し込みの他にも、演題登録や参加費の振り込み、事務局への問い合わせや英語対応など様々な機能があります。
ハイブリッド学会の受付システムは、参加者がオンライン参加か現地参加か、申し込み方法を選択可能なシステムを選びましょう。また、申し込み後の参加方法の変更にも対応可能なシステムだと理想的です。
参加登録システムの利用料金は、追加する機能によって変動しますが数万円〜数十万円かかります。高額に感じる方もいるかもしれませんが、学会運営の効率化には料金に見合う価値を発揮してくれます。
システムの機能を最小限にすることで、予算を削減することも可能です。学会の目的と予算に応じて、最適なシステムを選択しましょう。
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決済システム
決済システムは、参加費の決済を効率化するシステムです。
決済システムの運用により、参加者はオンライン上でのクレジットカード決済、コンビニ決済など負担が小さい方法で参加費を支払うことができます。運営側は入金管理や支払いの催促などをシステム上で行うことができます。
また、決済機能が組み込まれている受付システムも多くあるため、一つのシステムで参加登録と決済を効率化することも可能です。
システムの利用費用については、初期費用や月額利用料といった固定料金を支払うケースと、徴収した参加費の一部を決済手数料として支払うケースがあります。学会の予算と相談しつつ、利用するシステムを選択しましょう。
WEB配信ツール
ハイブリッド学会では、オンライン上でのコミュニケーションを可能にするWEB配信ツールが欠かせません。
WEB配信ツールにはZoomやWebex、Teams等の様々な種類があります。これらは双方向のコミュニケーションができる会議形式と、一方的なコミュニケーションとなるセミナー形式に分類可能です。例えば、Zoomなら「Zoomミーティング」が会議形式、「Zoomウェビナー」がセミナー形式に対応しています。それぞれにメリット・デメリットがあるため、目的と予算に応じて利用するツールを選択しましょう。
WEB配信ツールの費用は、利用するツール、参加人数、契約するアカウント数によって大きく変化します。
一例として、「Zoomウェビナー」と「Zoomミーティング」の利用料金を掲載いたします。
・Zoomミーティング料金(2023年5月時点)
プロプラン | ビジネスプラン | ビジネスプラスプラン | |
参加人数上限 | 100人 | 300人 | 300人 |
月額利用料金 | 2,115円 | 2,700円 | 3,125円 |
年間利用料金 | 20,100円 | 26,900円 | 31,250円 |
・Zoomウェビナー料金(2023年5月時点)
参加人数 | 月額利用料金 | 年間利用料金 |
~500人 | 10,700 | 92,800 |
501〜1,000人 | 45,700 | 457,000 |
1,001〜3,000人 | 133,100 | 1,330,600 |
3,001〜5,000人 | 334,700 | Zoomに問い合わせ |
5,001〜10,000人 | 872,300 | Zoomに問い合わせ |
参考:Zoom公式サイト( Zoomミーティング料金 , Zoomウェビナー料金 )
※サポート業者に契約やZoomの設定を依頼する場合、別途料金が必要になります
ハイブリッド学会開催に必要な配信機材の費用
ハイブリッド学会では研究の発表や講演をオンラインで配信するために、複数の配信機材が必要となります。以下では、その機材とおよそのレンタル料金を解説いたします。
音響機材
音響機材には、発言者の音声を録音するマイクと、音量や出力先を調整するミキサーが挙げられます。マイクからサウドミキサーを通じて、スピーカーから音声が流れます。
マイクは会場に備え付けられているモノを使用することも可能です。
ミキサーは発言者の声量に応じた音量の調整、オンライン配信でのハウリングの防止に役立ちます。
ミキサーのレンタル料金は1日およそ3,000円〜でレンタル可能です
マイクのレンタル料金は1日およそ1,000円〜でレンタル可能です。
映像機材
映像機材には配信用のビデオカメラと映像をパソコンに取り込むビデオキャプチャーが挙げられます。
また、発表資料をオンラインで共有するには、パソコン画面を取り込むHDMI分配器が必要になります。
ビデオカメラは1日およそ3,000円〜でレンタル可能です。
ビデオキャプチャは1日およそ1,500円〜でレンタル可能です。
ノートPC
会場の映像と音声を配信するためには、配信用のPCを用意する必要があります。映像と音声を処理するスペックと、配信するための設定やソフトのインストールが必要となります。私物のPCで配信を行うことも可能ですが、可能であればPCをレンタルすると良いでしょう。
ノートPCのレンタル料金は1日およそ10,000円〜20,000円です。
各種ケーブル
オンライン配信を行う上で、映像や音声をPCに取り込むケーブルが必要となります。ケーブルの本数や長さは会場によって異なるため、前もって会場を下見した上で必要なケーブルを選定すると良いでしょう。
レンタル料金は使用するケーブルによって異なりますが、LANケーブルであれば1本500円/日〜レンタル可能です。
ハイブリッド学会開催の人件費
学会サポート業者への依頼
ハイブリッド学会の一部業務を学会サポート業者に依頼するケースも多くあります。特にサポートが必要となるのは配信機材の取り扱いです。
トラブルなく配信するには事前の準備や機材の取り扱い、配信用PCの操作など専門的な知識が必要となります。そのため、ハイブリッド配信の経験があるスタッフの派遣を依頼する学会が多いようです。
また、開催前のリハーサルやマニュアル作成等も依頼することが可能です。
当日のサポートスタッフへの人件費
学術大会にはアルバイトスタッフが必要な場合もあります。学術大会の運営には受付対応や会場の案内など様々な業務が発生します。また、オンライン配信にトラブルが起きていないか、監視するスタッフも必要になるでしょう。学生や人材派遣業者にサポートを依頼し、トラブルのない学術大会を実現しましょう。
ハイブリッド学会の費用を抑える方法
ハイブリッド配信は現地開催とオンライン開催を組み合わせた形式であり、現地のみ、オンラインのみの開催より費用が高くなります。ここでは、ハイブリッド学会の費用を削減する方法をご紹介いたします。
オンライン配信の簡略化
オンライン配信の方法を工夫することで、予算の削減が可能です。例えば性能に拘らず映像機材・音響機材を選択することで、予算を削減することができます。
また、配信機材を一切使用せず、PCの内蔵カメラとマイクを利用し配信を行うことも可能です。配信の品質は下がりますが、機材のレンタルが不要となり大幅なコスト削減が可能です。また、配信をPCのみ完結させることで操作が簡単になり、外部スタッフを削減し、人件費を抑えることにも繋がります。
現地会場の参加者数を制限
現地会場での参加者数を予算に応じて制限することで、支出を抑える方法もあります。会場のレンタル料金は学会の運営における非常に大きな支出項目となるため、
参加者を制限し、収容人数の小さい会場を採用することは効果的なコスト削減方法と言えるでしょう。また、現地での参加者が会場の収容可能数に対して少なくなるリスクを回避することもできます。
しかし、会場参加者の制限にはリスクもあります。現地参加を希望する人々がオンラインでしか参加できなくなる事態を招く可能性があるからです。
この方法を採用する際には、費用削減の効果と参加者満足度のバランスを考えた上で、現地参加者の受け入れ人数を設定しなければなりません。
ハイブリッド学会の費用シミュレーション
ここではハイブリッド学会にどの程度費用がかかるか、予測シミュレーションした結果を掲示いたします。ハイブリッド学会を開催する際の参考になれば幸いです。
小規模学会の場合(参加者200人)
概要:学会が開催するシンポジウム
現地参加者数:100人
オンライン参加者数:100人
現地会場:大会場×1、控え室×1
オンライン会場:Zoomウェビナー×1
開催日数:1日間
外部委託:当日サポート・会場の下見
上記の設定でハイブリッド学会を開催する場合、費用の総額は約55万円になります。
大項目 | 小項目 | 単価 | 数量 | 金額 |
会場費 | 大会議室(1日) | ¥110,000 | 1室 | ¥110,000 |
控室(1日) | ¥27,500 | 1室 | ¥27,500 | |
参加登録・決済システム | 決済手数料 | ¥125,000 | 一式 | ¥125,000 |
Zoom関連費用 | Zoomプロプラン(1か月) | ¥2,115 | 1アカウント | ¥2,115 |
人件費 | 当日サポートスタッフ(1日) | ¥50,000 | 2人 | ¥100,000 |
会場下見 | ¥30,000 | 1回 | ¥30,000 | |
機材レンタル | PCレンタル(1日) | ¥28,000 | 3台 | ¥84,000 |
Webカメラ(1日) | ¥1,000 | 2台 | ¥2,000 | |
LANケーブル | ¥600 | 3セット | ¥1,800 | |
機材輸送費(往復) | ¥20,000 | 1回 | ¥20,000 | |
合計(税別) | ¥502,415 | |||
合計(税込) | ¥552,657 |
大規模学会の年次学術集会(参加者1000人)
概要:年次学術集会(国際学会)
現地参加者数:500人
オンライン参加者数:500人
会場:大ホール×1、会議室×12
オンライン会場:Zoomミーティング×12、Zoomウェビナー×1
開催日数:3日間
外部委託:当日サポート・会場の下見・機材セッティング
上記の設定で学術大会を開催する場合、費用の総額は約560万円になります。
大項目 | 小項目 | 単価 | 数量 | 金額 |
会場費 | 大規模ホール(700人収容)(3日間) | ¥570,000 | 1室 | ¥570,000 |
会議室(100人収容)(3日間) | ¥60,000 | 12室 | ¥720,000 | |
システム利用料 | HP制作費用 演題登録システム 参加登録システム |
¥1,250,000 | 1式 | ¥1,250,000 |
Zoom関連費用 | Zoomビジネスプラン(1か月) | ¥2,700 | 12アカウント | ¥32,400 |
Zoomウェビナー(1か月) | ¥45,700 | 1アカウント | ¥45,700 | |
人件費 | 当日サポートスタッフ(3日間) | ¥120,000 | 12人 | ¥1,440,000 |
会場下見 | ¥25,000 | 1回 | ¥25,000 | |
機材セッティング | ¥30,000 | 1回 | ¥30,000 | |
機材レンタル | PCレンタル(1週間) | ¥18,000 | 12台 | ¥216,000 |
Webカメラ(1週間) | ¥7,000 | 12台 | ¥84,000 | |
LANケーブルセット(1週間) | ¥40,000 | 12セット | ¥480,000 | |
音響ミキサー(1週間) | ¥4,000 | 12台 | ¥48,000 | |
HDMI切り替え機(1週間) | ¥4,000 | 12台 | ¥48,000 | |
機材輸送費(往復) | ¥20,000 | 1回 | ¥20,000 | |
印刷費 | 抄録集500部 | ¥90,000 | 1式 | ¥90,000 |
合計(税抜) | ¥5,099,100 | |||
合計(税込) | ¥5,609,010 |
※シミュレーションはあくまで1例です。実際の学会では、展示企画、ポスター発表、受付業務、託児所、旅費・交通費等、学会の内容に応じて費用項目が追加される可能性がございます。
ハイブリッド学会サポートはこちら
今回は、ハイブリッド学会の費用について解説いたしました。
しかし、いざハイブリッド開催を選択しても「機材のセッティングができない」「配信中のトラブルが不安」というお悩みも多いのではないでしょうか。
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