無料論文データベースDOAJとは?利点や収録方法を解説
「DOAJ」とは、世界中のオープンアクセスのジャーナル・論文を掲載する無料の論文データベースです。
そこに論文を収載することで、執筆者・出版元はさまざまな恩恵を受けることができます。
収載のメリットと条件、申請方法について解説します。
DOAJの目的と背景
DOAJの定義・目的・意義
「DOAJ(Directory of Open Access Journals)」は、世界中のOA(オープン・アクセス)ジャーナルと論文を掲載した特殊なデータベースです。オープンアクセスジャーナルとは無料で閲覧できる学術誌のことです。DOAJはスウェーデンのルンド大学によって創設され、イギリスの民間非営利団体であるInfrastructure Service For Open Access(IS4OA)によって管理・運営されています。DOAJの目標は言語や教育機会の壁を越え、質の高いジャーナルや論文を利用者全員に提供することです。そのため、現在DOAJはおよそ20,000種類ものジャーナルを掲載し、80言語に対応しています。
DOAJの内容と特徴
DOAJの特徴
DOAJの特徴は大きく3つです。
まず、DOAJの最大の特徴はOA(オープンアクセス)のジャーナルと論文だけを掲載していることです。
オープンアクセスとは、利用者側がそのジャーナルや論文を無料で閲覧・使用できるという意味です。
(※ジャーナル・論文の使用は、著者の定めた一定の条件を守る必要があります。)
オープンアクセスのジャーナルは露出の機会が増え認知度が高まるため、その内容が研究者や一般の人々に伝わりやすくなります。また、論文では引用される回数が増えるかもしれません。また、オープンアクセスのジャーナルや論文が増えると、その分野全体の研究がより発展しやすくなります。
また、DOAJの2つ目の特徴は、高い信頼性です。厳しい審査を通過し、DOAJに掲載されたジャーナルは「ハゲタカジャーナルではない」という信頼を得ることができます。(DOAJは信頼できるジャーナルを集めた、いわゆるホワイトリストとして機能しています。)
「ハゲタカジャーナル」とは適切な査読を行わずに論文を掲載し、研究者から論文掲載料(APC)を騙し取ろうとする雑誌や論文掲載サーバーを指します。もしも研究者がハゲタカジャーナルに論文を掲載してしまうと、不当に論文掲載料を騙し取られるだけではなく、研究者としての信頼を損ねてしまう可能性すらあるのです。
3つ目の特徴は、J-stageと連携していることです。
J-stageは方針の1つとしてジャーナルのOA化を推進しており、各ジャーナルの事情を鑑みたジャーナルコンサルティングやDOAJへの申請代行を行ってきました。この結果、2022年2月には日本のジャーナル64誌がDOAJに登載されるという快挙を成し遂げています。また、既にJ-stageに登載されているジャーナルがさらにDOAJに採録されると、J-stageサイトの「資料トップ」画面に「DOAJ」と表示が出ます。詳しくは「J-STAGEのDOAJ収載に向けた取り組み」をご覧ください。
DOAJの利点
DOAJは利用者と出版元双方に有益です。利用者側のメリットは先述した通り、信頼できるジャーナルを無料で閲覧・使用できることです。出版社側のメリットとしては、露出・閲覧の機会が増えることで投稿数が増加すること、評判・信頼性・影響度の向上があげられます。
DOAJと他データベースの相違点
論文データベースにはWeb of Science (WoS)やSCOPUSという非常に有名なデータベース(以下、DBと呼びます)があります。それでは、DOAJとこれら2つの相違点は何でしょうか?
DOAJ・WoS・SCOPUSはそれぞれ類似した審査基準を持つため、大部分は同じようなものということができます。しかし、DOAJとそれ以外の2つのDBには以下の3つの違いがあります。
(1)登載ジャーナル数
DOAJの登載ジャーナル数は他の2つのDBと比べて、およそ3倍です。
(2)ジャーナルの質
DOAJは継続的にジャーナルの審査を行い、審査基準から外れたものは掲載を取りやめています。そのため、DOAJに登載されなくなったジャーナルがWoSやSCOPUSに残っている場合もあります。つまり、DOAJに掲載されているジャーナルの方がより高品質です。
(3)対応言語の数
DOAJはWoSやSCOPUSに比べて極めて多岐にわたる言語に対応しています。
以下の表で具体的な数値で3つの違いを比較しました。
DOAJ | WoS | SCOPUS | |
登録OAジャーナル数 | 19,925 | 5,905 | 5000程度 |
審査基準 | 極めて厳しい | 厳しい | 厳しい |
対応言語数 | 80 | 40 | 9 |
DOAJへの収録方法
ジャーナルの搭載方法
DOAJに登録申請をするためには、まず以下の基本要件を満たす必要があります。
(1)ジャーナルの全文を無料公開しており、公開の遅れ(エンバーゴ期間)がないこと。また、ゴールドOAジャーナルであること。
※ゴールドOAジャーナルとは、論文の投稿者が投稿料金を支払う形態のOAジャーナルを指します。論文の投稿受理後から公開されるまでの期間がグリーンOAジャーナルよりも短いことが特徴です。
(2)クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を明記していること。
DOAJは特に、最も制約の少ないCC-BY(表示)ライセンスを推奨しています。
※CCライセンスとはインターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールのことです。
(3)ジャーナルのwebサイトが適格であること。
- ジャーナル専用のURLを有していること。
- サイトが簡潔明瞭であること。
- ジャーナルの利用に無関係な広告や何度もポップアップする広告の表示がないこと。
(4)かかる料金について明示されていること。
- 論文掲載料(APC)、投稿料、査読料など投稿者が支払わなくてはいけない全ての料金について記載があること。もし投稿者が料金を支払う必要がなければ、その旨も明記すること。
(5)投稿規定等に査読方法が明記されていること。
(6)ジャーナルの編集委員の名前や所属の明確な記載があること。
(7)「学術出版における透明性とベストプラクティスの原則」に従っていること。
※「学術出版における透明性とベストプラクティスの原則」とはDOAJと他3委員会が定める16のルールで、DOAJにおける受理審査基準の1つです。
さらに、上記以外にも様々な要件を満たす必要があります。以下にその他の重要な要件を記載しました。さらに詳細な要件については以下のリンクをご参照ください。
- ジャーナルが進んで学術研究を発表していること。
- ISSN (国際標準逐次刊行物番号)の登録があり、webサイトにISSNを掲載していること。
- 年に5件は研究論文を発表していること。
- 対象読者は研究者か実務家であること。
- 新しく創刊されたジャーナルの場合は、DOAJに申請を行う前に、1年以上の刊行実績があること。もしくは10 件以上の論文を掲載していること。
必要な要件を全て満たしていることを確認できたらオンラインの申請フォームにて申請を行います。この申請フォームには40問程度の質問があります。記入後は途中保存ができないため、事前に回答を下書きしてからフォームを記入することをおすすめします。申請フォームの記入に不備があると、自動的に却下されてしまいます。不正確な情報や回答の空欄、記入方法の誤りがないか念入りにチェックしてから申請してください。
申請から決定までの期間は最長6ヶ月です。この間にDOAJの編集委員から申請に関して質問メールが届くことがあります。このメールには必ず回答してください。返信をしなかった場合、審査は却下されます。
申請が受理された場合、確認メールと出版社アカウントへのログイン方法が記載されたメールの2通がジャーナル連絡先へ届きます。
申請が却下された場合は却下理由を記載したメールが届きます。基本的には、却下から6ヶ月経過すれば再申請を行うことが可能です。
また、ジャーナルがDOAJ上で公開された後にも基準やベストプラクティスにそぐわないと判断されると、DOAJからそのジャーナルは削除されてしまうため、最新の情報をDOAJに提供できるように注意してください。
ウェブサイト作成の委託ならSOUBUN.COM
DOAJの申請には専用サイトが不可欠です。しかし、見やすく使いやすいウェブサイトを作ることは簡単なことではありません。SOUBUN.COMではウェブサイト作成も承っております。DOAJの申請はハードルが高いものですが、部分的なサポート・代行を使用することも選択肢に入れつつチャレンジしてみてはいかがでしょうか?