WEBオンライン学会の開催事例と実施方法は?
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、学術集会、シンポジウム、研究会をオンラインで開催する方法が広まりました。現在では、様々な状況に応じてオンラインと対面の開催方法が適宜選ばれています。しかし、オンライン開催と一括りに言っても、その実施形式は多岐にわたります。
本記事ではオンラインでの学会開催における様々な実例をご紹介します。
オンライン学会の実施方法
オンライン学会・バーチャル学会を開催すると言っても様々な実施方法があります。
大きくは「映像を配信するパターン(ライブ配信、録画済の動画配信)」と「映像を配信しないパターン」に分類されます。
映像・動画を利用する場合
オンライン学会において映像・動画を利用する場合、下記のような開催事例があります。
①Zoom等のWEB会議ツールを導入してリアルタイム(LIVE)で発表を実施
WEB上に大会タイムテーブル画面や各演題の抄録画面を掲載し、Zoom等のWEB会議室へのリンクを表示することで、リアルタイムの学会発表に簡単にアクセスすることができます。現在も多くの学会がこの実施方式を採用しています。
オンラインでの学会開催でも研究者同士の交流が図れることや、会全体としての盛り上がりも期待できる点で満足度が高いですが、リアルタイムである分、接続や運営がスムーズになるよう、当日までの事前準備を念入りに行う必要があります。
また、会場に座長と発表者が集まり参加者向けに講演を配信するか、発表者が各自の環境から配信を開始するか、講演の時間んをタイマーで測るかなど、どの配信形式を選択するかによって必要なスタッフ数や機材等が異なります。
②YouTube等を活用し、事前録画した動画データをオンラインで公開
WEB上の大会タイムテーブル画面や各演題の抄録画面にVimeoやYouTube等へのリンクを埋め込み、各発表動画を視聴していただきます。一般的にオンデマンド配信と呼ばれる方法です。
発表者全員分の公開に限らず、例えば招待講演者の発表のみを録画して公開し、ポスター発表はデータ掲載のみ、という形もあります。
参加者に限定して公開したい場合には、VimeoやYouTubeといったネットワークシステムを利用し、限定公開することが可能です。また、質疑応答については抄録画面でコメントを受け付ける方法と動画配信システム自体のチャット・コメント欄を活用する方法がありますが、大会システム上であれば質問と回答がスレッド一覧で確認できるなどのメリットもあるため、前者の採用が多い傾向にあります。
③動画とLIVE配信を組み合わせて発表を実施する形式
上記2つを組み合わせ、演題ごとにライブ配信か動画配信か選べるパターンもあれば、発表自体はVimeoで行って質疑応答はLIVEで行う、といったパターンもあります。この場合、会期が1日だと想定すると、
当日午前:動画を公開し、参加者に動画を視聴していただく。その際、フォームやコメント欄を用意して質問を募集
当日午後:複数の発表演題をまとめて質疑応答の時間をLIVEで設け、順番に発表者から質問へ対応
というような流れとなります。Zoomで動画を共有する手法もありますが、その場合、配信トラブルが発生しやすくなるため注意が必要です。しかしこのような方法であれば、参加者の交流も確保しながら運営も維持することができます。
資料のみを公開する場合(映像無し)
映像・動画を利用しての開催が難しい場合は、以下のように抄録・資料のみを公開するという方法もあります。
①抄録のみオンラインで公開
WEB上で大会の抄録を公開し、大会実施としてみなす方法です。
(印刷した要旨集・抄録集を個別に参加者へ発送するケースもあります)
学会のホームページに特設ページを作成して参加登録者のみにパスワードを設定・提供し、そのページの中に抄録を載せることで閲覧してもらう方法や、学術大会専用のクラウドシステムを使用して公開する方法があります。
専用クラウドシステムの場合には、以下のような機能を使うこともできます。
・キーワードや著者名、カテゴリ、日程など、あらゆる条件を入力できる講演・講座検索機能
・スケジュール登録した講演を自身の抄録集としてPDF化する機能
②抄録だけでなく、発表スライド等もオンラインで公開
発表スライドや補足ファイルも抄録と併せて公開することがあります。
学会のホームページに特設ページを設ける場合には、抄録と同様にその中に載せて参加登録者へ公開します。
学術大会専用クラウドシステムを利用する場合には、発表者自らがアップロードできるようにする形と、主催者がファイルを集めて一括アップロードする形があります。
アップロードされたファイルは大会の参加者に限定して公開され、オンライン会期中のみ公開し終了した後にまとめて非表示にすることも可能です。
学会によってはファイルのダウンロード防止、テキストコピー防止を望まれるところもありますが、PDFファイルであればそのような対応も可能です。
その他、付随する対応例
上記の開催方法と組み合わせて、以下のような開催方法も考えられます。
①オンラインでの企業展示
大会特設ページやクラウド型大会システムのWEBプログラム内に、各出展企業に時間を割り当て、LIVE動画配信をしてもらったり、事前に提出してもらった動画を公開したりする方法があります。
ページのどこかにバナーなどを設置し、LIVEシステムや動画へURLを貼る方法などもあります。
②オンライン企画の実施
学会発表や質疑応答以外にも、ウェビナーやポスターフォーラム、ワークショップなど、多くの学会イベントをオンラインで実施することができます。地理的な制約を超えて広範な参加者との交流が促進され、知識の共有や学術的な議論にアクセスしやすくなるでしょう。
③オンラインでのコメント機能活用
学術大会専用クラウドシステムには、WEB抄録上で発表者に対しての質問やコメントができる機能があります。
WEB抄録で公開された論文・発表スライド・補足ファイル等を確認した参加者が、質問や意見がある際に各演題・ポスター毎にコメントを投稿することができます。リアルタイムでのコメント投稿により、参加者間での直接的な意見交換が可能となり、画期的な交流が実現するでしょう。
会期終了後に引き続きコメントを受け付けることも、会期終了のタイミングで非表示にすることも可能です。
講演や抄録への「いいね!」やコメント機能、メッセージ送信機能を使えば、大会を通じて参加者同士の繋がりが深まります。
※このようなコメント機能の利用にあたっては参加者への告知が重要です。
オンライン学会の実例
※こちらの事例は弊社サポートの実績・事例ではありません。
※開催規模は公開情報からの推計で、開催後の人数は変動する可能性がございます
※開催内容は本記事作成時点の情報となりますので、随時引用元学会様にて内容が変更となる場合がございます
・第126回ロボット工学セミナー(規模500人未満)
このセミナーは2020年に遠隔配信のみで実施され、参加者の安全を考慮し複数人視聴を制限しました。また、参加者の理解を深めるため、関連テキストを電子データ化し、事前にメールで配信しました。
詳細リンク:https://www.rsj.or.jp/event/seminar/news/2020/s126.html
・サービス学会第8回国内大会(規模500人未満)
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、国内大会を中止し、発表者が提出したペーパーやポスターセッション参加者のペーパー等をプロシーディングにまとめました。
予定されていた口頭発表はオンラインで行われ、急な開催にもかかわらず延べ200名弱の方が申込まれました。
詳細リンク:http://ja.serviceology.org/events/domestic2020.html
・第59回日本生体医工学会大会(規模500~1,000人)
現地での開催が中止されたため、プログラムはビデオ会議システムZOOMを用いて、オンラインで開催されました。
事前参加登録期間は開催直前まで延長され、学会会期中も当日価格での参加登録が受け付けられました。
詳細リンク:https://ww2.med-gakkai.org/jsmbe2020/oshirase/
・言語処理学会第26回年次大会(規模500~1,000人)
オンライン会議システム Zoom を使用し、セッションごとに設けられたオンライン会議室で口頭発表が行われました。
発表者はスライドを画面共有し、参加者とのリアルタイムな質疑応答を通じて対話的なセッションを実現しました。ポスター発表もオンラインで行われ、懇親会を含む交流の場もデジタル空間で提供されました。
詳細リンク:https://www.anlp.jp/nlp2020/#online-report
・第20回日本核医学会春季大会(規模1,000人以上)
参加登録、購入手続きが完了している受講者を対象としてウェブでの講演を実施しました。
音声付きの動画配信となりますので、インターネット環境とPCがあれば受講することができます。受講者はマイページにログインすることで、講義資料(講義動画配信と講義テキストPDF公開)を視聴・閲覧することができます。
※ウェブ開催期間中は何度でも繰り返し講義動画視聴、並びに講義テキストPDFダウンロードが可能です。
詳細リンク:https://www.jsnm-spring.org/information/
今後の学会オンライン開催について
オンライン学会の開催形式には多様なパターンが存在します。ご紹介した実例を参考に、各学会に適した方法で開催しましょう。
5G技術の進展に伴い、オンラインでの環境がさらに充実し、自然災害や感染症のリスクを軽減しながらも、学術交流の機会を維持する意義が増しています。
また、学会の本質である直接的な議論や交流の場としての集合型会議の重要性は変わらないものの、ハイブリッド形式の導入により、遠隔地からの参加者も増えることで参加の幅が広がります。このように、オンラインと対面の融合は、より多くの研究者にとって学術大会への参加機会を拡大する一助となることでしょう。
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コロナ禍であった2020年、webオンライン学術大会関連について、弊社へのご相談件数は100学会様以上となり、2024年はさらに件数が増えている状況です。学会様の事情を考慮し、様々なご要望やご相談にご対応致しますので、お気軽にお問い合わせください。
※各都道府県庁・省庁等の公的機関様からのご依頼・ご発注の実績もございます。
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