シンポジウム参加後のレポートの効果的な書き方と例文
シンポジウムの参加後、レポートを所属機関に提出しなければならない場合も多くあります。
シンポジウムの参加レポートでは、盛り込むべき内容があり、それをどのように表現するかが重要となってきます。
本記事では、必要な内容をおさえた効果的な書き方(ノウハウ)を例文とともに紹介していきます。
シンポジウム参加レポートの目的
「シンポジウム」は、日本語にすれば「公開討論会」とでも言うべきものです。通例あるテーマに関して、異なる考えをもつ識者を集めて、それぞれの立場から意見を述べてもらった後、聴衆も交えて全員で討論します。よって、いろいろな見方があることを学べるというのが大きなメリットです。
これに教育の一環として、あるいは教官や上司の指示などにより参加した場合は、どのような内容だったのか、そこから何を学んだのかといったことを報告する必要があります。これにはレポート(報告書)を提出するという形をとるのが一般的です。
レポートに盛り込む内容
レポートも、論文と同じく、通例書き方には一定の決まりがあります。提出先によって若干の違いが見られる場合もありますが、おおむね次のような項目で構成されています。
・作成者の氏名
・レポートの作成日
・シンポジウム名
・開催日時
・開催場所
・講師名
・参加人数
・シンポジウムの内容
・会場内の様子、雰囲気
・所感
まず本題に入る前に、日時や参加者などシンポジウムの基本的な情報を明らかにしておきます。文字どおり形式的な部分ですので、ただ埋めていけばよいのですが、名前や名称などはうろ覚えになっている場合も少なくありません。
必ず資料などを確認して、間違うことのないよう留意しましょう。
一方、レポートの中心となるのは、最後の三項目(「内容」「雰囲気」「所感」)です。
論文で言えば「本論」に相当する部分になります。それぞれ、次章で解説していきます。
シンポジウムの内容
最初に、このシンポジウムではどのようなことが行われたのかということについて、解説します。当日配布されたプログラムがあれば、それを見て、時系列で書いていくとよいでしょう。あまり長々と書き連ねても、かえって分かりにくくなってしまいますので、要点を絞って箇条書きにするなど簡潔に書くようにしましょう。
会場内の様子・雰囲気
ここでは、その場にいなかった人にも、当日の聴衆の様子や場内の雰囲気が適確に伝わるようになっていなければなりません。どのような人々が何人程度集まり、会場の活気や特に話題性の高かったトピックなどについて触れます。ここでも私情は挟まず、第三者的視点で書く必要があります。
所感
「所感」は、別の言葉に置き換えれば「感想」とになります。だからと言って、「おもしろかったです」「参考になりました」というだけでは、レポートではなく単なる「感想文」になってしまいます。
大切なのは何を学んだのか、何を得たのか、今後自分の研究にどう生かせるのかという具体的な成果を併記することです。この点を意識すれば、グッと報告書らしくなるでしょう。
シンポジウム参加レポートの例文
前述のポイントをもとに、参加レポートの一例を作成しました。参考にしてください。
※設定等はあくまで架空のものです。
・作成者の氏名
〇田×郎
・レポートの作成日
令和2年8月25日
・シンポジウム名
我が国が抱えるSTEM教育の課題
・開催日時
令和2年8月11日
・開催場所
○○市××センター
・講師名
〇〇大学教育学部○○教授
私立〇〇小学校教頭〇〇先生
STEM教育研究センター○○所長
・参加人数
約130名
・シンポジウムの内容
日本のIT教育の第一人者である〇〇大学教育学部○○教授、いち早くプログラミング教育を学校に取り入れている私立〇〇小学校教頭〇〇先生、STEM教育研究センター○○所長、三名による講演が開かれた。講演内容は以下の通りである。
①我が国のIT教育の現状
②2020年から導入される STEM教育について
③諸外国におけるSTEM教育の導入例
④STEM教育を普及させるために
また休憩を挟んだ後半には、そのお三方によるパネルディスカッションが開かれた。
・会場内の様子、雰囲気
現役の教員や教育学部学生など、総勢150名程度が参加した。
最後のパネルディスカッションでは、世界的にSTEM教育が拡大される中で、STEM教育が遅れている我が国でどのような施策が必要か、聴衆との間で議論がなされた。
・所感
昔はよく親から「ゲームはよくない」と言われたものだが、〇〇先生によるとゲームこそ数理への興味を引き出す玉手箱であるという考えに共感させられた。子どもたちの間でブームとなっているマインクラフトは空間認識能力だけでなく、課題解決能力も高めることから、〇〇先生は授業にも積極的に取り入れているそうである。最近では、プログラミングツール『スクラッチ』を導入する私立学校も増えてきており、日本でもSTEM教育の強化が叫ばれている。
とはいえ、まだまだ日本では諸外国に比べると、STEM教育の導入が遅れており、今後、どのように導入していくべきかが課題であることを感じた。STEM教育の導入に向けて、やはり官民一体となり、教育者主導でプロジェクトを行う必要性がある。最近では埼玉大学内に設置されたSTEM教育研究センターなどの機関も作られているが、まだまだ不足しているのが現状で、地方と中央との格差も問題視されているそうだ。そのためにも、将来的にこのような機関を全国的に増やしていくことが第一の課題であり、このような機関と教育機関がどのような連携を図れるのかも、今後の課題となってくると、〇〇先生がおっしゃっていたのが印象的であった。
私はこのような先生方の意見を拝聴した上で、私が現在研究している「教育のIT化」の中で、何か解決の糸口になるようなものがないものかと考えた。今考えられるプランとして、諸外国の導入モデルを調査した上で、文化的・制度的側面を考えながら我が国でどのように導入できるのか、また機関同士が連携できる組織づくり、算数・国語にプログラミング教育をどのように取り入れることができるのかについて考察したレポートをまとめようと考えている。また、○○先生が勧めるSTEM教育実践プロジェクトは、私たちの学部にも取り入れることができそうであるので、これから導入スキームを考えていきたい。
参加レポートを書く際の注意点
通例シンポジウムでは、さまざまな講演者やパネリストが、多種多様な意見や見解を展開していきます。そこで、事前に確認するポイントを絞っておくようにすると、聴講中メモを取るのも楽になりますし、大事なことを聞き漏らす心配もなくなるはずです。スマートフォンで録音しておき、後から再度聞き直すこともおすすめです。
また、レポートは論文ではありませんので、別にいわゆる「である調」でなければならないということはありません。やわらかい表現がお好みでしたら、「ですます調」にしてもよいでしょう。ただし、両者を混在させてはいけません。必ずどちらかに統一するようにしてください。
レポートは人に報告するためだけのものではなく、自分の考えを記録するための備忘録にもなります。そのため、レポート作成は先延ばしをせず、まだ記憶が新鮮なうちにまとめた方が賢明です。