学会の税務にも必要? インボイス制度とは
2023年10月より、消費税の控除に関連する「インボイス制度」が導入されました。
今回は、インボイス制度導入にあたり学会がおさえておくべき事項について詳しく解説いたします。
(記事の内容は2024年6月時点の情報をもとに制作しています)
インボイス制度とは
適格請求書(インボイス)とは?
適格請求書(インボイス)とは、通常の請求書に加え登録番号や適用税率を記載した書類です。請求書や納品書、領収書、レシート等が当てはまります。
従来の請求書には以下の事項が記載されます。
・請求書発行事業者の氏名 / 名称
・取引年月日
・取引内容
・税率ごとに区分して合計した対価の額
・軽減税率の対象品目である旨
・交付を受ける事業者の氏名 / 名称
インボイスには、通常の請求書に加えて以下の事項を記載します。
・発行業者の登録番号
・適用される税率
・税率ごとの消費税の合計額
インボイス=適用税率と登録番号を記載した請求書
と、認識しておきましょう。
消費税控除のため制度化
的確請求書保存方式(インボイス制度)とは、事業者が消費税の控除(仕入税額控除)を申請する際に、取引先が発行する的確請求書(インボイス)の保存を義務付けるものです。
日本では2023年10月より制度が施行されています。
消費税控除にインボイスが必要となるため、企業が取り引き先にインボイス発行を求める機会も増えるでしょう。
では、学会はインボイスの発行をすべきなのか。
次節では学会のインボイス発行について解説します。
学会税務にインボイスは必要?
消費税が課される取引を行う場合に要検討
学会がインボイス発行を検討するのは、外部の事業者との取り引きに消費税が課税される場合です。
消費税の課税対象は「対価性」のある取引です。この取り引きは商品やサービスの対価として報酬を受け取るものを指します。
一般的な学会運営における会費は不課税と判断されるため、インボイスの発行も必要ありません。
学会運営に必要な会費の徴収や、会員に向けた大会参加費の徴収には消費税が課されません。会費や大会参加費は直接的な対価とは見なさないケースが多いからです。
しかし、一部の取り引きには対価性があると見なされ、消費税の課税義務が発生します。
取引先の事業者はこの取引について学会が発行するインボイスがないと、原則として消費税の控除が受けられません。
次節ではその取引について解説します。
学会の活動が消費税課税の対象となる場合
学会の活動の中で、以下のような取り引きを行った場合は消費税の課税取引となります。
・書籍販売や広告収入など、明確な「対価性」のある取引を行う場合
学会から書籍や広告による収入、企業からの研究事業の請け負いなどを行う学会もあるでしょう。
そのようなケースでは、明確な対価性があると見なされ消費税の課税対象となります。
取引先も企業であることが多いため、インボイス発行を検討すべきでしょう。
・学術大会や研修の参加費を徴収する場合
大会や研修の参加費は、代金を得て大会や研修といった「サービス」を提供しているとみなされるため、原則課税取引となります。
ただし、参加費を会員から受け取る場合、その金銭は学会の活動のために使われるとみなされ、消費税は不課税となります。
学会活動の課税についての関連記事としてこちらもご参照ください。
学会の参加費に消費税はかかる? | SOUBUN.COM
インボイス導入のメリット
インボイス導入のメリットは「企業からの印象が良くなる」ことです。
企業は消費税控除を申請するため、インボイス発行を求めるようになるでしょう。
企業との取り引きを行う学会はインボイス導入をおすすめします。
学会向けインボイス発行方法
インボイス発行には申請登録が必要
インボイスを発行するには、学会が「インボイス発行事業者」となる必要があります。
そのためには、税務署へインボイス発行事業者としての登録申請を行わなければなりません。
税務署への申請書類提出や、国が運営する税務システム「e-Tax」や、税務署への申請書類提出による登録が可能です。
e-Tax
e-Taxには「e-Taxソフト」と「e-Taxソフト(web版)」があります。e-Taxソフトはパソコンで、e-Taxソフト(web版)はパソコンやスマートフォン、タブレットから利用することができます。web版では表示される質問に答える問答形式を採用しているため、入力漏れなどを心配せずに申請することができます。
※ e-Taxソフト(web版)をスマートフォン、タブレットから利用できるのは国内の個人事業者に限られています。法人や国外の個人事業者税理士による代理送信の際はパソコンを使用しましょう。
必要書類など
・電子証明書(マイナンバー等)
・利用者識別番号等
※税理士による代理送信の場合は不要です。
登録完了後、事業主に「登録番号」が割り当てられます。登録通知までにかかる期間は約1ヶ月です。 登録通知書は事前に登録したメールアドレスにデータで送付されます。
参考:インボイス制度特設サイト(「申請手続」関連ページ)「e-Taxによる登録申請手続」
申請書類提出
登録申請書を書面で提出する場合、申請書を各国税局のインボイス登録センターに送付します。
必要書類など
・本人確認書類(マイナンバー等)
・適格請求発行事業者の登録申請書
登録申請書のフォーマットは国税庁のサイトからダウンロードすることができます。
登録通知までにかかる期間はおよそ1ヶ月半です。登録通知書は書面にて送付されます。原則として再発行されないため紛失しないよう注意しましょう。
参考:インボイス制度特設サイト(「申請手続」関連ページ)「郵送による提出先のご案内」
必要事項を記載したインボイスを交付
前々節で解説したように、インボイスには通常の請求書に「登録番号」「適用される税率」
「税率ごとの消費税合計額」を記載します。
より詳しい記載事項は、国税庁HPや同庁が発行する以下のパンフレットをご覧ください。
(令和3年7月) 適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-
インボイス発行の注意点
学会はインボイス発行事業者となることで、消費税の申告義務が発生する「課税事業者」となります。
学会の税務が増えるため、学会の税務担当者と相談した上で登録を検討しましょう。
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