生物学のプレプリントを集約したアーカイブ「BioRxiv(バイオアーカイヴ)」とは?

bioRxiv参考画像

生命科学、医学・生物学分野で急速に利用が広がっているbioRxivについて、その意義と学術ジャーナルへの影響、メリットや注意点、活用方法について詳しく解説します。

プレプリントのレポジトリであるbioRxivとは?その意義と影響度

bioRxivは、生命科学、医学・生物学分野のジャーナルに投稿する前の論文、つまりプレプリントを集積するリポジトリ(プレプリントサーバ、プレプリントアーカイブともいいます)です。
物理学や数学の分野ではすでに1990年代から、arXivと呼ばれるプレプリントリポジトリが活用されていました。それに遅れること十余年、2013年末にコールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリが生命科学、医学・生物学関連分野のためにbioRxivを設立しました。

その意義は、新しい論文を、長い査読期間を待つことなく早く公開できることと、その論文について分野の枠を超えて多くの人から評価や意見をもらえることです。その意義を活かすため、記事の搭載も閲覧も、誰でも無料でできます(ただし、分野にふさわしい内容か、剽窃はないかなどの基本的なチェックはあります)。

bioRxivは設立後順調に利用者を増やし、2018年には毎月1,700ほどのプレプリントがアップされています。その動きを受けて、オープンアクセスジャーナルや科学文献を発行しているPLOS (Public Library of Science)は2018年2月、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリと連携し、PLOSのジャーナルに投稿された論文は自動的にbioRxivにも登録されるようになりました。

今では主要な生命科学・医学・生物学系のジャーナルのほとんどがbioRxivと提携し、あとから提携雑誌に投稿する場合は自動的にデータが流用されるので入力が容易になりました。
なお、bioRxivに投稿された記事にはDOIが振られ、引用の対象となります。そのため、一度投稿した記事は取り下げられません。そしてジャーナルから出版された後には、このプレプリントが正式な論文にリンクするようになります。

査読前の論文「プレプリント」を公開するメリットと注意点

従来の論文の投稿手順では、ジャーナルに投稿するとその査読システムによって数人の研究者が数週間~数カ月をかけて査読を行います。そしてその後に、大量の修正を要求されることも少なくありません。
ジャーナルへの投稿前または同時にプレプリントを公開すれば多くの研究者の目に触れ、記事にコメントしたり、有益な情報を提供したり、疑問点を指摘されたりするため、査読と同様の効果を受け記事をブラッシュアップできる点が著者にとってのメリットです。

その他の研究者にとっては、まだ出版されていない最新の論文がいち早く確認でき、しかもその論文に対しコメントをしたり著者と議論したりすることで、常に研究の最前線に触れることができます。

出版者にとっては、プレプリントのコメントや議論を査読に活かすことができるので、査読の省力化にもなります。

なお、学術的に重要な発見や新説が含まれていた場合、プレプリントを公開することで先を越されるのではないかと心配する人もいますが、プレプリントは先取権が主張できるとみなされているので、その心配はありません。

搭載する場合の注意点としては、すべてのジャーナルがbioRxivへの搭載を認めているわけではないことです。投稿を予定していたジャーナルがプレプリントの公開を認めていなかった場合は、投稿ができなくなってしまうこともあり得ます。また、Oxford Journal系のジャーナルでは、プレプリントとして公開していたことを理由にオープンアクセス料金を払わなければならないケースもあるので注意が必要です。投稿したいジャーナルがある場合には、投稿する前にそこの規定を確認しましょう。また、bioRxivへの投稿に慎重な人も多いので、共著者がある場合は共著者全員の確認を取ることも大切です。

公開されたプレプリントを引用する際にも注意が必要です。プレプリントにもDOIが付与され通常と同じ引用方法で使用できるようになりますが、インパクトファクターが付与された正式なジャーナルからの引用ではなく、論文として出版されるか不確定な記事を引用は慎重にしなければなりません。ジャーナルによっては、プレプリントの引用を認めていない場合もあるので、必ず確認しましょう。

bioRxivの使い方

実際に投稿する際と記事を検索する際の使い方を順序に沿って説明します。

bioRxivの投稿方法

投稿の前に、前項でも触れましたが、正式に投稿する予定のジャーナルのプレプリントに対するポリシーを確認しておきましょう。問題がなければ論文を投稿できる状態で準備します。

ジャーナルへの投稿と同時に行う場合、互いに連動していて、ジャーナルへの投稿手続きと同時にそのままbioRxivにも投稿されるシステムになっているものもあります。
単独で投稿を行う場合は、bioRxiv用のPDFファイルを作ります。ジャーナルへの投稿論文はそのジャーナルの体裁や書式の通りに作成しますが、bioRxivでは決まった体裁がないので、好みの体裁で作成して構いません。ただ、図を多く挿入している場合はPDFのサイズが大きくなりすぎないよう注意しましょう。論文全体のPDFで大きくても20MB以下に抑えるのが理想です。

また、投稿前にORCID(学術著者の識別子ID)を取得しておきましょう。
準備できたらいよいよ投稿です。bioRxivのアカウントを作成し、投稿画面の指示に沿って原稿をアップロードするだけです。
投稿を済ませると、bioRxiv で剽窃がないか、社会的・政治的・倫理的に問題ないか、研究分野にふさわしいかなどをチェックし、1~2日後には公開するという連絡のメールが来てそのまま公開されます。公開されると、DOIが付与されます。これは正式に投稿した論文とは別のものになり、論文が公開された後はリンクするようになります。

bioRxivの検索方法

bioRxivに収載されている論文を検索するには、トップ画面にもある検索ボタンを使って、任意のキーワードを入れるか、Advanced Searchを使ってピンポイントで記事を検出します。検索結果の一覧が出たら、タイトルをクリックするとその記事のページに飛びます。
記事のページには、タイトル、著者、プレプリントのDOI、すでに正式に論文が出版されている場合にはそのジャーナル情報とDOIが表示され、アブストラクト、フルテキスト、PDFのプレビューが見られます。この記事に対しコメントを送ることもできるので、著者へのFBも可能です。

bioRxivは登場以来順調に利用者を増やし、業績を積み重ねてきたことで、出版社からの支持も高くなっています。今後もますます機能も充実し、利用の機会は増えることが予想されます。使い方を正しく理解して、研究活動に活かしましょう。

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