学術論文の考察の書き方やポイント
論文の質を高めるためには、考察が重要です。
考察を記載する上で、結果や結論との区別が明確とならず、何を伝えたいかぼやけてしまうことも少なくありません。
考察とはなにかをご説明し、どのように書いていくべきか、考えていきたいと思います。
考察とは
「考察」とはなにか。考察は論文では当たり前のことばですが、「検討」「考慮」など似たようなことばもあり、混同されがちです。また論文では「結果」や「結論」も記載していくため、実際に筆を取ると、戸惑うことも少なくありません。考察を辞書で引くと「物ごとを明らかにするために深く考え調べること」とあります。
しかし学術論文における考察は、「仮説に基づき実験を行い、その結果の因果について自分で考え、述べること」です。正しい結果が得られた場合だけではなく、想定外の結果の場合でも、なぜそのようになったのか、論理的に文章を組み立てていきます。
また、論文の全体構成としては緒言→目的→手段→結果→考察→結語となります。前の流れを踏まえつつ、次に記載する「結語」につながる内容となるように文章の組み立てを行いましょう。
考察のポイント
考察で必ず書くべきポイントは以下の5つです。
(1) 研究課題についての一般的な認識
(2) 結果から導ける解釈(ただし、一般的・客観的に導けるもの)
(3) 結果に至った背景・要因(特に想定外であった結果のとき)
(4) 今回の研究の欠点・限界
(5) 結果を踏まえた新たな課題・問題の提起
以上の5つのポイントに加え、以下のような内容もあるとさらによいでしょう。
・先行研究や既存の研究との関係や比較
・予想される反論に対してのあらかじめの反駁
また、考察を書く際は次のようなことは避けましょう。
・期待した結果が得られなかったことの感想や反省を書く
・主観的な解釈や結果のデータから導けないことを書く
・解釈が人によって異なる曖昧な文言を使う
・新たな切り口を持ち出して考えを述べる
考察は結果に基づくものだということ、「目的」で述べた内容に回答することを意識して書くとよいでしょう。
結果・考察・結論それぞれの違い
最後に、混同しやすい「結果」「考察」「結論」の違いについてまとめておきます。
結果
「結果」は、調査・分析の結果です。目的や対象に対し、仮定した方法で実証したものがどのような結果となったか、ということを示します。
結論
「結論」は、結果を通じて考察した結果、目的に対してどうであったか、対象としたものに有効であったかという、その研究に対しての全体のまとめとなります。
考察
「考察」は、実験や処置から得られた結果から、考えられること・見えてきたことを紐解いていく作業です。つまり、その実験・処置を行ったことで、どのような結果や効果が得られたのか、他の症例や、今回行った方法と結びつけて考察し、論文を書き上げていきます。
レポートを書き慣れていても、学術論文となると、書くことはできても受理されるかはまた別の問題となります。重要なのはどのような考察がなされているか、資料としてまとめられているか、今後の参考文献となり得る考えが示されているかの3点です。
何気なく使用していた言葉を、いまいちどその意味について「考察」してみてはいかがでしょうか。
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