許諾は必要?論文の抄録作成における著作権について
論文は、学会への提出時や図書館への蔵書時に、抄録が作成されることがあります。この抄録作成には、著作権がどのように関係してくるのでしょうか。ここでは、論文(抄録)と著作権の関係について詳しく解説します。
抄録とは
本題に入る前に、まずは抄録とはいったいどんなものを指すのかについて説明します。
抄録とは、論文からとくに必要な部分を抜粋した、抜き書きのことです。抄録は内容によって2つに分かれます。1つは指示(的)抄録といって、その論文が取り扱うテーマや、どんな内容を取り扱っているかを70字程度でまとめるものです。本論については触れず、見たときに論文の概要を把握するためのものとなっています。もう1つは報知(的)抄録といい、論文の内容の要点、つまり用いた手段や得た結果などをおよそ400字でまとめるものを指します。
著作権とは
続いて著作権についても簡単に説明します。
著作権とは、自分の思想や考えを織り込んだ作品(著作物)を作った本人(著作者)に与えられる権利のことを指します。著作権は、作者の人格を守る「著作者人格権」と、財産的利益を保護する「著作権(財産権)」に分かれます。著作者が著作権を持っている限り、許可を得ることなしに作品や著作者名を公に出すことは許されず、複製や翻訳、二次的著作物の利用をする際なども著作者の許諾が必要になります。この著作権は、一般的に著作者の死後70年まで保護されることとなっています。
論文には著作権がある?
では、論文も著作物に該当するのでしょうか。著作権法第2条1項1号には、学術に関係するものも著作物に該当すると定義されています。そのため、論文の著者も、著作権を持つことになります。ただし、学会によっては、論文や抄録を投稿した際に、「著作権は学会に帰属する」としていることもあります。この場合、著作者人格権は著作者が持ったままですが、著作権(財産権)を学会に譲ることとなります。しかし文脈によっては、著作権の一部は著作者に残ったままになることもあるため、事前に学会に問い合わせておくことが大切です。
論文の抄録作成には許諾が必要?
先に説明したとおり、抄録は論文の概要やまとめに値します。そのため抄録作成には原則として著作者の許諾が必要です。ただし、図書館などで文献の場所や存在を伝えるために書かれる抄録(指示抄録)の場合は、二次的著作物に該当せず、許諾が必要ない場合もあります。一方で、論文抄録や学術集会抄録として抄録をまとめ、掲載・公開・出版などをする場合は、著作者に許諾を取る必要があるでしょう。
論文にも著作権があります。抄録の作成時には、著作者、学会のどちらかに権利があるのかを確かめた上で、許可を得るようにしましょう。
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