点字印刷とは、縦3点、横2点の6点の組合せからなる点字を触覚により読み取れるように、凸状の点を印刷でつくる方法です。
本や名刺だけではなく、最近では公共施設にも点字の案内板や触地図などが多く設置されています。点字は、触れることで、色々な情報を読みとる文字ですから、目で読む普通の文字と比べると制作上の制約もあります。
また点字には、文字の大きさや表記の仕方、1ページに入る文字の量や位置など様々なルールがありますので、企画の段階から視覚障害団体や点字の専門的知識のある製作会社やデザイナーとの打合せが不可欠です。
点字は拡大や縮小ができない文字です。大きくしたり小さくしたりすると、触ったときのザラザラ感が変わってしまい、読みにくくなったり、それが点字だと認識できなくなるからです。点字には、原則として一つのサイズしかないと考えて、制作にのぞまなければなりません。スペースがないからといって、縮小しておさめるようなことはできません。
点字は、私たちが普段使う一般の文字と表記も一部異なります。点字に対して一般の文字を「墨字」と呼びますが、墨字では、「彼は新宿へ行った」という文章の「彼は」の「は」、「新宿へ」の「へ」にみられるように、実際の発音と異なる表記を用いることがあります。しかし、点字では、こうした表記を発音通り「かれわ しんじゅくえ いった」と書くのです。
また、例えば「くうき(空気)」や「そうじ(掃除)」などのように、「う」で伸びる長音についても、「くーき」「そーじ」などのように、点字では横棒線の長音符号をを用いて書き表します。
点字を書く際には、マスあけのルールにも注意を払う必要があります。マスあけは「分かち書き」ともいいます。点字では漢字も一部使われていますが、一般にはカナ表記が殆どです。
通常、私たちが目にする「墨字」の文章は漢字カナ交じり文で書かれていますから「分かち書き」の必要はありません。しかし、これをすべてカナだけで書いたら、非常に読みにくいものになりますし、場合によっては意味を取り違える恐れも生じることになります。 この「分かち書き」のルールを正しく書くことは、点字についてかなり熟練しないと難しいといわれています。たとえば、「東京都」という語は、分けて書くことをしませんし、「都知事」という語も分けて書く必要はありません。ところが、「東京都知事」になると、分かち書きの必要がでてきます。これは「とーきょー」「とちじ」と分けるべきでしょうか?「とーきょーと」「ちじ」と分けるべきでしょうか?
点字は、表音文字なので、行末で自由に改行することもできません。分かち書きで区切られたひとかたまりの語句は、ひとかたまりで書かれなければならないのです。点字は、拡大、縮小ができないだけでなく、文字の間隔をちょっと詰めるということができませんし、こうした分かち書きの都合から点字の行末は揃いませんし、墨字に比べて1ページあたりに入る分量がとても少なくなることにも注意が必要です。
点字を書くときの難しさは、レイアウトの問題にもっともあらわれます。点字では、書体を変えて目立たせたりとか、文字を大きくして見出しにするなどというようなことはできません。レイアウトによる書き方の工夫でここは見出しだとか、強調されているとか、意味がわかれるなどとあらわさなければなりません。こうした書き方の工夫には、単に点字の表記に精通しているだけでなく、実際の視覚障害者のアドバイスが得られなければ難しいでしょう。