情報保障とは?
定義と必要性
情報保障とは、視覚・聴覚障害等を含むすべての障害のある方が、情報へ簡単にアクセスできるよう、適切な手段を提供することです。
障害にはさまざまな種類や程度があり、それぞれに応じた代替手段を用意し、平等に情報を利用できる環境を整えることが求められています。
令和4年5月には、参議院厚生労働委員会において起草された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が成立・施行されました。
参照:障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策の推進 | 内閣府
情報保障に関する法律
障害者差別解消法
「障害者差別解消法」とは、事業者が障害を理由として不当な差別的取扱いをすることを禁止し、共生社会の実現を推進することを目的として、
政府により2013年に制定されました。
「合理的配慮の提供」が義務化
合理的配慮とは、障害のある人から環境や手段の調整を求められた場合に、可能な限り対応することをいいます。
「合理的配慮の提供」に関してこれまで事業者は努力義務に留まっていましたが、障害者差別解消法が2021年に改訂され、法的義務となりました。
事業者とは、企業はもちろんのこと、教育・医療・交通機関などあらゆる分野を含みます。
これらの法律改訂により、すべての参加者が正確かつ公平に情報を得られるよう、より情報保障へのニーズが高まっています。しかし、専門的な内容が多い学術大会では、予算の関係やマニュアルの準備やこれら手配連絡などに多くの時間を要するため、運営担当の対応ハードルが高くなっているのが現実です。
上記もちろん学会運営における様々な場面でも、これらの配慮が必要となってきています。
学会での情報保障の役割
情報への平等なアクセスの確保
学会での情報保障は、すべての参加者が平等に学術情報へアクセスできる環境を、学術団体が主体となり提供することが重要になります。
障害のある方だけでなく高齢者や外国語話者など、多様なニーズへの対応が求められます。
学会では、具体的に以下のようなサポートが行われることが多いです。
点字資料
要旨集やプログラム・事前送付する資料等を点訳し、視覚障害のある方が必要な情報にアクセスできるようにします。
拡大文字資料
弱視の方が読みやすいよう、要旨集やプログラム等の資料を通常より大きな活字で印刷します。
白黒反転資料
ロービジョンの方が読みやすいよう、白地に黒字で書かれたテキストを黒地と白字に変えて印刷します。
「白」は、光の反射が強く、まぶしさを強く感じる方がいらっしゃいます。下地を「黒」、文字を「白」にすることで、光の反射を抑え、まぶしさを軽減することができます。
音声ガイド
展示内容や講演内容の重要な情報を音声で案内することで、視覚障害のある方の理解をサポートします。
手話通訳
聴覚障害のある方が手話によって内容を理解できるよう、きこえる方の発表を手話で通訳します。また、手話での発言内容を読み取り、音声日本語に通訳します。手話は、日本手話や国際手話、ASL(アメリカ手話)などがあり、発表者・参加者のニーズに合わせて通訳者を手配します。
また、話の内容をその場で文字にして伝える「要約筆記」という方法もあります。
リアルタイム字幕
音声をリアルタイムで文字化し、スクリーンに表示します。事前に用意された動画や、ライブ配信に字幕を付与することもあります。 日本語音声から日本語字幕の表示だけでなく、英語音声から英語字幕表示、また、英語、韓国語などへの翻訳字幕サービスもあります。
字幕は聴覚障害のある方だけでなく、高齢の方や非母語話者にとっても理解しやすくなるため、幅広い参加者の情報アクセスを可能にします。
指点字通訳
指点字は、盲ろう者(目と耳の両方が不自由な人)のコミュニケーションの手段の一つです。盲ろう者の手(指)の甲に、通訳者の手(指)を乗せ、指で叩く事によって、聴覚・視覚情報を通訳します。
指点字の叩き方は、点字のそれぞれの「点」をそれぞれの「指」に対応し表現しています。
触手話通訳
触手話も、盲ろう者(目と耳の両方が不自由な人)のコミュニケーションの手段の一つです。
通訳者が手話を表し、盲ろう者がその手に触れて通訳する方法です。
映像コンテンツの工夫
学会内で使用する動画にも、字幕や手話・音声解説を付与することで誰にとってもわかりやすい電子コンテンツにします。
会場内の誘導サポート
身体に不自由がある参加者がスムーズに移動できるよう、必要に応じて支援スタッフを手配します。
また、バリアフリーに対応した会場を選ぶことも大切です。
学会の情報保障への取り組み例
※弊社サポート実績ではございません。詳細は大会公式HPをご参照ください。
日本文化人類学会第57回研究大会
2023年6月に開催された日本文化人類学会第57回研究大会では、大会史上初めて手話通訳の導入がされました。
手話通訳が導入される予定のセッションでは発表者に対しいくつかの配慮が求められました。
資料作成時の配慮や事前提出が要求された他、口頭発表の際にゆっくりと明瞭に話すことが推奨され、特に「これ」「それ」などの指示語を避けるよう求められました。
参照:第57回研究大会-研究発表に関するアクセシビリティ・ガイドライン
AIDS 2024(第25回国際エイズ学会)
AIDS 2024(第25回国際エイズ会議)では、聴覚障害者に向けたリアルタイム字幕(CART)が導入され、開閉会式や主要セッションで利用されました。
参加者は自分の端末でQRコードをスキャンして、リアルタイムの音声変換を読み取ることができます。
人工知能技術を活用した通訳も提供され、包括的な情報アクセスを提供しました。
参照:Accessibility | AIDS 2024 | International AIDS Society (IAS)
国際学会では、多言語対応の字幕や要約筆記が利用され、参加者全員に理解しやすい環境が整備されている大会も多いようです。
また、ウェブサイトや事前案内で、情報保障に関する事前告知を行うことも見受けられます。
SOUBUN.COMの学術大会の情報保障サポート
SOUBUN.COMでは、学術大会の運営トータルサポートの中で、情報保障に特化したサービスも提供しています。
国際大会も対応可能な手話通訳
ろうの方(手話を第一言語とする方)に情報を伝える手段として必須となる手話。SOUBUN.COMではご希望に応じた手話通訳者を手配します。
英語⇔日本手話、英語⇔国際手話など、発表者や参加者のニーズに合わせてさまざまなパターンで手配可能ですので、国際大会もおまかせください。
精度の高い字幕付与
字幕を表示することで、聴覚障害のある方やご高齢の参加者へ正確に情報を伝えることが可能になります。
音声自動変換ツールでは不安がある専門用語が多い学術発表においては、文字変換への高い精度が求められます。
SOUBUN.COMでは、専門の字幕入力オペレーターを手配し、より精度の高い字幕付与を行います。動画への字幕付与も対応可能です。
韓国語、英語等、リアルタイムの翻訳字幕もご提供いたします。
音声解説による情報保障
プレゼンテーション資料や展示内容を音声で説明することで、視覚情報にアクセスしづらい方々にも内容を伝えられるようサポートします。
専門用語が多く含まれる学術大会において、わかりやすく正確な情報保障が可能です。
ハイブリッド・オンライン開催大会にも対応
オンライン形式や配信のある大会においても、手話通訳や字幕の提供が可能です。
リモート参加者にも情報を平等に提供し、物理的な会場だけでなく、オンラインでも質の高いサポートを行います。
学術大会の運営サポートも
SOUBUN.COMは、情報保障だけでなく、学術大会の運営を総合的にサポートします。
事務局業務、参加受付システム提供、プログラム作成、事前・当日の運営支援など、幅広いサービスを提供しています。
お気軽にご相談ください
SOUBUN.COMでは、学術大会運営における情報保障サポートの相談を随時受け付けています。
手話通訳や字幕の導入を検討されている方や、具体的なサービス内容や料金に関しては、お気軽にお問い合わせください。
すべての参加者にとって参加しやすい学会運営をサポートいたします。