紀要とは
紀要とは、大学(短期大学を含む)や研究機関などが定期的に作成・刊行する学術雑誌です。学部・学科・先行ごとに大学教員や研究員の研究内容・成果が書かれた論文を中心に掲載されています。博士・修士課程の大学院生による論文、時には学部生の研究論文も掲載されることもあります。
査読を行わないことが多く、論文を投稿してから短い期間で公開されるケースが一般的です。
紀要を電子化するメリット・注意点・方法は?
紀要電子化のメリット
紀要を電子化することで得られるメリットは7つあります。
①アクセスの容易さ
紙媒体の紀要は主にキャンパス内の図書館に所蔵されており、利用するためには時間も労力も必要です。
しかし電子化すると、インターネットを通じて紀要にアクセスできるようになり、学生をはじめ図書館に足を運ばず全国各地で書かれた論文を見ることができます。様々な学問分野の情報を簡単に共有できることは、新たな研究分野の開拓を促進する可能性があります。また、情報の発信が容易になることで、紀要の知名度向上にも繋がるのではないでしょうか。
②論文の多様化
紙媒体の紀要では残せない研究に関する音声や動画、参考資料のリンク等を、論文と共に残すことが可能です。様々なメディア資料をそのまま保管することで、論文の内容を豊かにすることができます。幅広い情報の提供は、研究者がより充実した研究活動を行うために必要不可欠です。
③劣化・滅失しない
紙媒体の紀要は、年月を経るごとに劣化していきます。また、地震・火事等の自然災害など有事の際には滅失してしまう恐れがあります。
一方で電子化した紀要はそれらの不安要素はほとんどありません。データが残っている限りは滅失することはなく、継承も容易です。
④印刷・製本コスト削減
紙媒体の紀要で不可欠な印刷・製本の過程は、電子化した紀要では必要なくなるため、そのため、このプロセスに関連したコストをまるごと削減できます。
⑤環境への負荷軽減
紙を使用しないためペーパーレスに繋がり、環境への負荷を減らすことができます。
⑥スペースの確保・保管費の削減
紙媒体の紀要は保管場所が必要であるため、過去の紀要を保管し続けようとすると膨大なスペースを必要とすることになります。紀要を電子化することで保管スペースと関連した費用を削減することが可能です。
⑦データの整理が簡単に(紀要を保管する部署・組織の業務負担の軽減)
オンラインデータベースや検索システムを通じて紀要を容易に整理・検索できるようになります。これによって紀要を保管する部署・組織の負担を軽減することが可能です。
紀要を電子化する際の注意点
このように、紀要電子化には多くの長所があります。一方で、紀要の電子化には注意点もあります。
①電子化を行うための技術的制約
質の高いスキャンやデジタル化を行うには、専門技術や機器を必要とします。また、古い文書や写真など特殊な素材のデジタル化には特別な機器や方法が必要となる可能性があります。
②電子化を行った後の保存・管理
管理を怠ると、データ損失のリスクやセキュリティ上の問題が発生するおそれがあります。
例:リンクが切れてページを見れない
外部に情報が漏れてしまう
非意図的なデータの改竄・削除
リンクの監視・メンテナンスやデータのバックアップ、暗号化、アクセス制限、セキュリティ監視ツールの使用など、事前に対策しておきましょう。
③著作権の問題
特に過去の紀要を電子化する際には、著作権の所在が不明確な場合があります。電子化により内容がサーバー上に登録されることは、著作権法で定められた「複製」及び「公衆送信」に該当するため、論文執筆者の許諾が必要です。許諾なく登録するとトラブルが発生するおそれがあります。
最近では多くの場合、著作権に関する規程が設けられているため、特に問題なく電子化を進められることが多いです。規程がない場合はその改定を推奨します。
※著作権に関して
紀要を出版する機関(大学・研究機関等)から事前に紀要の電子化について個別にメール等で連絡を行い、著者の承諾を得る場合が多いようです。その際、許諾してもらえない場合の対応も、ホームページなどに記載し、理解が得られるようにすることが重要です。(アナウンス例:「許諾をいただけない場合は、以下の連絡先に⚫︎年⚫︎月⚫︎日までにご連絡ください。ご連絡がない場合は、許諾をいただけたものとして紀要の電子化を進めさせていただきます」)
参考:聖神女子大学図書館|聖心女子大学において刊行された研究紀要類の電子化・公開に係る著作権の処理について(お願い)
紀要を電子化する方法
発刊済の紀要を電子化する際は、まず冊子をスキャンしてデータをコンピューターに取り込むことが一般的です。PDFを選定し、OCR技術を活用してテキストのデジタル化を行います。これにより、異なるデバイスからもデータを簡単に閲覧できるようになります。スキャン時に印刷が薄い場合や、写真が鮮明でない場合は、適宜修正処理を施すことも可能です、
さらに、紀要に含まれる各論文のタイトル、著者名、発行日などの書誌情報をデータとして追加し、検索性を向上させます。これによって論文の可視性が高まり、引用される機会も増えるでしょう。電子化された紀要は、学術期間のリポジトリやJ-STAGEにアップロードして公開します。最後に、安全にアクセスできる環境を整備し、データの滅失に備えためのバックアップを行います。
このように、電子化には多くの工程が関わり、スキャナなどの専門機器が必要です。そのため、自力で行うには相当大変かもしれません。
参考:大学紀要の電子化作業について|別府大学・別府大学短期大学部
SOUBUN.COMの紀要電子化サービス
SOUBUN.COMでは前述した紀要電子化をサポートしています。
・高度な技術と豊富な経験を保有
SOUBUN.COMでは紀要電子化の豊富な実績を持つ専門スタッフが対応いたします。また、弊社ではOCR機能を用いて電子化を行います。OCRとは、画像として表示されている文章を文字データとして変換する技術のことです。
SOUBUN.COMの紀要電子化サービスではこのOCR機能によって、より高度な論文検索を行うことが可能となっています。
・公開範囲や閲覧者を制限できる
学内(研究機関内)のみで紀要を公開したい著者がいる場合には、リポジトリのみで公開させたり、J-STAGE公開の場合でも閲覧制限をかけたりするなど、紀要の公開範囲や閲覧者を制限することで、論文のセキュリティを担保することも可能です。
・電子ジャーナルへの登載も対応
電子化した紀要をweb上で公開する以外に、大学図書館のリポジトリとのデータの併用や電子書籍の形式での公開といった方法にも対応いたします。また、J-STAGE登載等の電子ジャーナル化も承っております。
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SOUBUN.COMは、学会サポート企業として80年以上の実績と経験があります。学会誌・紀要サポート事業としては、学会誌・紀要の編集、査読管理、電子ジャーナル掲載などをご支援しております。紀要の電子化、学会誌の制作についてお困りの方は、お気軽にお声がけください。ご質問やコストの見積もりのみならず、ご質問などにもご対応いたします。